カレンダーをめくってみれば
~今日は何の日?~

毎月12日 パンの日

 毎月12日はパンの日。1983年にパン食普及協会が制定した。

 日付は、1842年4月12日に江川太郎左衛門によって日本で初めて本格的な食パンが焼かれたことから、毎月12日とした。

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 パンの製造は、日本では江川太郎左衛門が始めたとされています。彼の師、高島秋帆の従者で、長崎のオランダ屋敷で製パン技術を学んだ作太郎がパン焼きの技術を伝えました。1842年4月12日に「兵糧パン」第1号が焼き上がり、これが好評を得て大規模な製パン所が設けられ、大量のパンが作られるようになりました。その後、他の地域でも同様のパンが作られました。この歴史から4月12日は「パンの記念日」とされ、さらに毎月12日は「パンの日」とされ、パン屋さんがより良いサービスを提供するよう努めることがパン食普及協議会により1982年に定められました。

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 パンの歴史は、非常に深いもので、その起源は8000年から6000年ほど前の古代メソポタミアに遡ることができます。当時のパンは、小麦粉を水でこね、焼いただけのもので、これが現在のパンの原型と考えられています。古代メソポタミアのパンは無発酵でしたが、その後、古代エジプトで偶然により発酵パンが誕生しました。これは食物としてだけでなく、供え物としても作られ、パン作りが一層重要な地位を確立するきっかけとなりました。

 古代エジプトから古代ギリシャへとパン作りが伝わると、パン職人が専門的な製パン技術を身につけ、ブドウ液から作られたパン種も使用されるようになりました。その結果、パンは大量生産されるようになり、その技術と食文化はヨーロッパからアジア、アフリカへと広がりました。そして、日本へと伝わる過程は、戦国時代に鉄砲とともに始まります。キリスト教が禁じられるまでの短い期間、日本でもパン作りが行われましたが、その後は長崎などで西洋人のためだけに限られた規模で作られるようになりました。

 しかし、本格的に日本人のためにパンが作られるようになったのは、1840年のアヘン戦争がきっかけでした。この戦争により、外国軍が日本に攻めてくる可能性を恐れた徳川幕府は、兵糧としてパンを作らせることを決定しました。炊くときの煙が敵方にとって格好の標的になりかねない米飯と比べ、固いパンは保存性と携帯性が優れていると考えられたのです。このとき、パン作りの指揮を取った江川太郎左衛門は「パンの祖」として知られるようになりました。

 そして、1854年に鎖国政策が終了し、パン作りが広く広まりました。特に港町である横浜や神戸を中心に、パンの製造が盛んになりました。その流れの中で1869年に銀座に開業した「木村屋総本店」は現存するパン屋で最も古いとされ、5年後には日本独特の「あんパン」が発売されて人気商品となりました。第二次世界大戦後は食生活の洋風化が進み、パンは米に次ぐ主食として日本人の食卓に広く定着しました。このような長い歴史と変遷を経て、現在のパンが形成されているのです。