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~今日は何の日?~

毎月16日 トロの日

トロ
引用元:かっぱ寿司

 毎月16日はトロの日。トロのネタでお客様に喜んでもらい、各店舗並びに業界を活気づけるために、カッパ・クリエイト株式会社が制定し、日本記念日協会が認定した。

 日付は、(1)(6)」の語呂合わせから毎月16日とした。この日には、来店した客全員に一貫ずつトロの無料プレゼントを行っている。

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 "トロ"と聞くと、ほとんどの日本人は寿司のネタを思い浮かべるでしょう。それは、その柔らかさと豊かな旨みから、寿司ネタの中でも高級品として特に好まれる部分です。このトロとは、マグロの特定の部位の呼称で、脂質の含量が高い腹部の身を指します。

 その名前の語源は「肉質がトロリとしていること」から来ています。吉野昇雄の『鮓・鮨・すし-すしの事典』によれば、吉野鮨本店の客が「口に入れるとトロッとするから」と命名したとされます。定着する前は、脂身であることからアブと呼ばれていたそうです。

 しかし、今日のようにトロが高級品とされるようになったのは近代に入ってからのことです。特に江戸時代以前の日本では、マグロといえば赤身を指し、トロの部分は品質が劣化しやすいとされ、上等な部位とは考えられていませんでした。その理由は、日本人が白身のすっきりした旨みを好み、また、トロは脂肪分が多く水分を弾いてしまうので、赤身のように醤油に漬け込んでヅケにして保存することができなかったからです。

 今日では動物性脂肪の旨みが広く知られるようになり、加えて、冷凍や冷蔵の保存や輸送技術が向上したことで、トロの人気は高まりました。現在では、価格も急激に上がり、赤身の2倍以上の値段がつくこともあります。

 特に、よく脂の乗った部分を「大トロ」、やや劣るものを「中トロ」と称し、これら以外の部分は「赤身」または単に「マグロ」と称して、「トロ」とは別物とされています。また、最近ではマグロの完全養殖技術の進歩により、「全身がトロ」などという個体も作れるようになりました。

 トロという言葉はマグロに限定されません。脂が乗っている状態の他の魚肉、例えば、カツオの刺身の脂が乗った部分はトロカツオと呼ばれるなど、広い範囲で使われます。また、肉にもトロという言葉が使われ、牛肉や豚肉の脂が乗った部位もトロと呼ばれます。これは、マグロのトロが持つ高級品としてのイメージを借りようとする販売戦略に利用されています。

 結局のところ、トロの存在は、日本の食文化の中で深く根付いていることを示しています。その風味と食感は、日本料理の繊細さと独特の美学を象徴しています。寿司と一緒に食べるとき、トロの豊かな風味と口溶けの良さは、日本の食文化の極致を体験する一つの方法と言えるでしょう。

マグロの豆知識

 縄文時代から食べられていたと言われているマグロだが、江戸時代中期頃までは「宍魚(しび)」と呼ばれており、「死日」を連想させたため武士からは敬遠され、庶民の食べる安物という扱いだった。しかし江戸時代に登場したマグロのヅケの寿司が評判になったことで需要が増え、高級魚という扱いに変わっていった。それでもトロに関しては、昭和に入るまで「捨てられることもあるほど不味いもの」とされていたんだとか。

 ちなみにトロの語源は、口に入れるとトロっとした感触があるから。